井口的詩的感情的井口論

釣りとハロプロネタがメインのちょっと格闘技が好きなおっさんのブログ笑

頬を伝う雫の行方

右肩を極められフォール寸前のホンダの表情を、
コーチの井口氏は、数ヶ月前のその表情と照らし合わせ見つめていた。


○○高校1年のホンダです!


不慣れな挨拶で始まった週1度の練習。
多少ちびっ子でレスリングをやっていた…とは言え、まだまだ経験値も
少なく、悪く言えば「素人に毛が生えた様なもの」。


「先生からはタックルが上手いって聞いていたが、これは実戦では
使えないなぁって、すぐ感じましたね。」(井口談)


練習の最中も覇気がなく、どこか他人事の様にタックルを繰り返す。
闘争心のないスパー。アドバイスをしても上の空。
その姿に、井口氏も戸惑いを感じたと言う。


現代の女子高生に、どこまでハードな練習を課せる事が出来るのか?
せっかく来ているのに、ハードにして来なくなったら…。
葛藤を抱えながらも、腫れものに触るかの様に接していた井口氏だったが、
試合も決定した6月、とうとう堪忍袋の緒を切ってしまう。


「セトとホンダのスパーがあまりにダレていたんですよ。部員2人で、
1年と3年。仲良くって気持ちも解らなくもない。けど、マットの上に
それは要らない感情なんです。仲良く手繋ぐ様な練習では共倒れになる
だけです。お互いが、勝つ!負けたくない!って気持ちを込めてスパーを
するから強くなっていくんです。同情で切磋琢磨は成り得ません。
その事を手厳しく指導しました。」


注意しながらも井口氏は、来週の道場にこの2人は来ないのでは?と肝を
冷やしたそうだ。
しかしここで誤算が生まれた。注意を受けてから入った2本目のスパーで、
セトとホンダ、お互いが闘志を剥き出しにして闘っているではないか。
タックルを必死で切る。意地でも倒そうと歯を食いしばる。
あのホンダが、悔し涙を溜め、必死に喰らい付いているではない!


「今回の試合で、あの表情を見れただけで参加した甲斐があったって感じです。
1回戦の自分と、2回戦の自分、どっちがカッコ良かった?それに気付いて
欲しいですね。」(井口談)


1回戦、いまいち集中出来ず、闘志も湧かずにマットに上がり、僅か1分足らずで
フォール負け。が、幸運にも敗者復活戦にエントリーされる。

「初戦は酷過ぎ。勝つ!って気力が全く感じれなかった…。ですので、敗者復活戦の
前には、勝つ気で行けよ!絶対に勝つ気で!って発破掛けました。」(井口談)

迎えた2試合目、初戦とは別人の様な動きを見せる。表情も、あの時のスパーが
甦った様だった。が、気力・気迫・気合いだけで勝てるほど甘くないのが勝負と
言うもの。1ラウンド目は凌いだものの、2ラウンド目にはガッチリと肩を極められ
フォール負け。負けた悔しさに合わせて、肩を痛めるというプレゼント付き…。
悔しさと痛みで、自然と頬を流れる涙。


「その涙を見た時、これは期待が持てる!って。あのホンダが歯を食いしばって
闘って、肩痛くなるまで粘ったんだから。またワンランク上の強さを啓発出来た
気がしましたね。」(井口談)


雨降って、地固まる。
「涙」は「悔しさ」の雨となり、「心」の地面に染み渡る。
そう、その地面こそが、「精神力」。
「涙」で濡れた「精神力」は、時を経て、固く、強固なものとなる。


「でも今度は、やっぱり笑顔がみたいですね(笑)。もちろん、勝ってのね。」(井口談)






※本編は井口さんの話を聞き、昔から友達付き合いをさせて頂いている私「長沢」が
執筆させて頂きました。というのは、「スポーツライターの卵」の私、なかなか書く場も
なく、井口さんに相談していた処「月曜の試合、ドキュメンタリー風に書いてよ!」と、
余りに急なオファーを頂戴いたしまして、読者の皆さま方には申し訳ないと思いつつ、
図々しく書かせて頂きました。井口さんのきまぐれっぷりで、また登場出来たらなぁ…
と思います(笑)。その時は皆さま、何卒御贔屓にして下さいね!
井口さん!こんな感じで良いですかー?